アスリート眠りの課題解決

学生アスリートの疲労の種類と睡眠:中枢性・末梢性疲労からの回復を促すコーチング

Tags: 睡眠, 疲労回復, リカバリー, コーチング, スポーツ科学, 学生アスリート

選手たちの練習や試合後の疲労蓄積にどのように対応すれば良いか、日々悩まれているコーチも多いのではないでしょうか。疲労はアスリートのパフォーマンス低下や怪我のリスクを高める要因となります。その回復には、適切な休養、特に睡眠が不可欠であることは広く認識されています。しかし、一口に「疲労」と言っても様々な種類があり、睡眠がその回復にどのように貢献するのかを理解することは、選手一人ひとりの状況に合わせた効果的なサポートを行う上で非常に重要です。

アスリートに見られる主な疲労の種類

アスリートが経験する疲労は、大きく分けて「末梢性疲労」と「中枢性疲労」の2種類に分類されることがあります。

末梢性疲労

これは、筋肉やその周辺組織で起こる疲労です。筋グリコーゲンの枯渇、乳酸などの代謝産物の蓄積、筋線維の微細損傷などが原因となります。激しい運動や長時間の運動によって、筋肉の収縮力が低下したり、痛みを感じたりするのが特徴です。例えば、スプリント練習後の脚の重さや、長時間走行後の全身の倦怠感などがこれにあたります。主に身体的なパフォーマンス(筋力、スピード、持久力など)の低下に影響します。

中枢性疲労

これは、脳や神経系で起こる疲労です。脳内の神経伝達物質の変動や、自律神経系のバランスの崩れなどが原因と考えられています。単に体が疲れているだけでなく、集中力の低下、判断力の鈍化、モチベーションの低下、イライラ感、あるいは全身の倦怠感などが現れます。過度なトレーニングだけでなく、精神的なストレスや睡眠不足なども中枢性疲労を引き起こす要因となります。特に、複雑な技術や戦術を要するプレイの精度低下、状況判断の遅れなどに影響します。

多くの場合、末梢性疲労と中枢性疲労は同時に発生し、互いに影響し合います。例えば、強い末梢性疲労を感じていると、それを回避しようとする脳の働きによって中枢性疲労が増強されることもあります。

睡眠が疲労回復に果たす科学的な役割

睡眠は、これら両方の疲労回復に不可欠な役割を果たします。単に体を休めるだけでなく、睡眠中には以下のような生理的なプロセスが活発に行われます。

疲労の種類に応じた睡眠からの回復とコーチができるサポート

疲労の種類によって、睡眠のどの側面がより重要になるか、あるいはどのようなサインが現れやすいかを知ることで、コーチは選手に対してより適切な声かけやサポートを行うことができます。

末梢性疲労が強い場合

中枢性疲労が強い場合

まとめとコーチへの提言

アスリートの疲労は、身体的な末梢性疲労だけでなく、脳や神経系の機能に関わる中枢性疲労も含まれます。そして、睡眠は両方の疲労からの回復において、成長ホルモン分泌、自律神経調整、脳機能回復といった重要な役割を担っています。

コーチが選手のパフォーマンス低下や不調に気づいた際、それがどのような種類の疲労によるものなのかを推測し、それに応じて睡眠状況をヒアリングし、適切なサポートやアドバイスを行うことは、選手の早期回復とパフォーマンス維持に大きく貢献します。

選手の言葉だけでなく、表情や行動、練習中の様子、学業の状況など、多角的な視点から選手のサインを捉え、睡眠を含む総合的なアプローチで選手の疲労回復をサポートしていただくことを願っております。選手一人ひとりの「眠り」に寄り添い、その回復力を最大限に引き出すことが、チーム全体の成長と勝利につながる第一歩となるでしょう。